ぼくまち通信(1) まちリテラシー

5月8日から9回かけて行われる渋谷区上原小学校との総合学習(計40時間)ぼくらはまちの探検隊は今年で13回目になります。参加者との意思疎通、私の頭の整理のために、今年はぼくまち通信を書いて、皆さんに配布することにしました。以下、その第一号。

はじめのごあいさつ:

本プログラムを主催している東京大学生産技術研究所村松伸です。ぼくらはまちの探検隊、通称、ぼくまち、あるいは、はまち、は、2005年度から正式に始まって、今年で13回目になります。上原小学校の子供たち、校長、副校長、教員の方々、そして、保護者のみなさん、さらには、毎年、このプログラムの助手、隊長、副隊長になってくださった学生さんたちに感謝のことばを、まず、申し上げたく思います。

今年は、上原小学校の教員の方々、保護者のみなさん、そして、プログラムの助手、隊長、副隊長の学生たちに、さらに何より、私自身の覚えとして、通信という名で、それぞれの時期の私の目論見、感想などを記録したく考えました。不定期ですが、時折考えたことを記します。

 

 私の専門は、建築や街、都市の歴史を追跡して、それを現代や未来に役立てる建築史・都市史研究というものです。長年、いろいろな街に行き、あるいは、多様な状況に直面しましたが、街をよくしていくためには、まちリテラシーの向上が必要だとの考えに至っています。建物、都市の物理的なものへの介入は、建築家、都市計画家、土木エンジニアの任務であり、特権でもあります。しかし、それだけでは、まちも村もよくなるわけではありません。そこに住まう、あるいは、そこで活動する普通のひとびとの、むらやまちでのふるまい方のガイドライン、理念などが、必要です。

私はそれを「まちリテラシー」と呼んでいます。ただ、それはあまりにも茫漠としているので、3つのスキルに分解しています。それは、それぞれ、「まちを観察するスキル」、「理想のまちを構想するスキル」、「責任もって関与するスキル」です。これらを小学生、大学生だけでなく、父兄の方も「まちリテラシー」を身に着けるというのがこのプログラムの目標です。

 

第1回目導入授業(5月8日):

導入授業を作ったのは、いつからだったかもう忘れましたが、当初はありませんでした。これを始めた理由は、共同作業や探検のやり方を、子供たち、そして、隊長、副隊長の学生さんにも学んでもらいたいからだったと思います。だれでもが、すぐに共同作業ができるわけでもなく、探検を行うのにも技能が必要です。さらに、各グループでのプログラムの進め方を練習します。これは隊長、副隊長のためでもあります。そして、第一回目に導入授業が始まりました。体育館で組体操のようなことをやっていた時期もありますが、最近は以下のようなプログラムに落ち着いています。

第1回目は、4時限です。1時限目が、私、そして、助手、隊長、副隊長たちの挨拶とプログラムの目的、全体像を紹介します。そして、昨年度のDVDを見ることになります。2時限目は、「まちとは何か」ということを学びます。ここで演繹法帰納法という二つの異なる見方を示しながら、頭のなかで考えているまち(演繹的なまち)と、3時限目におこなう探検で見たまち(帰納法によるまち)とを比べてみます。探検にはこちらで準備したワークシートが用いられます。まちの中で先生を探しなさい、という小さな指令です。そして、最後の4時限目に探検の結果を模造紙にまとめて発表します。

1時限はわずか45分です。大学の講義90分からするととても短く、まして、私の研究室のゼミは延々と5、6時間も続きます。しかし、小学生にとって45分でもその時間はとても長く、それなりの準備をしておかないとすぐだれてしまいます。15分くらいに区切った小さな課題の連続、その際に使うワークシートなど、私たちは、小学校の教員の方々に学びました。導入授業では、昨年度隊長をやって経験のある助手が、まず、手本を示します。隊長、副隊長は、そういったところに注意を向けて、参加してください。